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Joy Luck Club

日記帖・雑記帖・ぼやきノート・備忘録・・・




漫画「神聖喜劇」 ~第六巻~ ③ :: 2019/02/22(Fri)

【第八部 永劫の章】 「面天奈狂想曲 一、二、三、四」

3月21日 冬木と東堂は重営倉3日を終え、大崎山砲台での訓練生活に加わった。

3月24日 大前田軍曹を一番砲手とし、上等兵三名、砲台要員六名の十砲手による模範教練が行われた。(1月19日夜、巻脚絆のリュウジョウ(拉縄)を一文字に引いて”整頓”をして見せた大前田の花やかな姿に感嘆し敬意を持ち続けている東堂はその時の姿と目の前の教練での大前田の雄々しさを重ね合せた。)

4月6日 三個班員たちは4月9日に教育修了(満期)即日臨時招集となることを司令部より告げられ、その夜、それぞれの転属先希望を班長に申し出た。「ようやく人間らしい人間に出会え、友達らしい友達が出来たような気がしていた。この別れが名残惜しくてならない。ここでの三か月の生活は”生源寺や橋本や鉢田や曾根田から、特に東堂から”多くの事を感動的に学んだ・・・」と冬木は訥々と語る。

4月9日 対馬要塞重砲兵聯隊創立記念日―夕食時に清酒が振る舞われ、夕食後に演芸会が開かれた。そして、三個班全員が行う日夕点呼で班員たちの転属先が発表された。

・・・・・・・・・・・・・・・

4月8日に東堂は風邪をひいて軍医に”練兵休(就寝許可)”を取って一日寝ていた。翌日の9日朝も点呼に整列せず寝ていた東堂に大前田が、「お前は点呼にゃ立たんとか!」とものすごい剣幕で寝床まで来た。東堂は練兵休であるからと答えた。

4月9日、東堂の落ち度をやっと見つけたぞという感じで大前田は日夕点呼で東堂を詰問する。東堂もちょっとやそっとでは突っ込まれまいと先の先を読んで対応するが・・・

大前田: 練兵休ちゅうとはどげな事か”内務書”にゃどげなふうに書いてあるか
東堂: 練兵休は『教練、演習、衛兵其ノ他労力ヲ要スル勤務ヲ休マシムルモノ』と「内務書」に定められています
大前田: 練兵休の患者のしちゃならん事が他になにかあるかねぇ 「内務書」に決められとらんかねぇ
東堂: 「軍医殿がこれと指定して禁止される以外はしてはならないことは決められていないのではありますまいか。」

(この後必ず”就寝許可の患者は起きとっちゃならんはずじゃが、お前はなんで起きとるか” という類の設問が突きつけられるだろう。それに対しては”就寝許可とは就寝していてよろしいという意味で、就寝しなければならないという意味ではないと自分は答えるだろう”と東堂は考えるのだが、当てが外れて大前田の詰問は思わぬ方向に進む)

大前田: 夕飯の時にゃおらんじゃったがどうしとったか

実は東堂に面会したいという女性(”安芸”の彼女を知る”蝶子”)がいるから面会する様にと白石少尉から言われ、格別に面会を望みはしなかったが滞在している旅館へ出かけ、夕食もそこで食べてきた。”安芸”の彼女からの言伝がある訳でもなく、東堂も何も言付けなかった。特に会いたいと思った訳でもない人に会いに行ったことが大前田に東堂を「やっつける」好機を与えてしまった・・・


大前田は東堂に「軍隊内務書」の第二十一章第百九十五を大きな声で読んでみろと命じる。

『休日ニ於イテ教育、勤務等ノ差支エナキ営内居住者ハ之ヲ外出セシムルコトヲ得 但シ患者-就業者ヲ除ク-及犯行取り調中ノ者ハ外出スルヲ許サズ』

大前田: よし!練兵休の患者は外出しちゃならんちゅう事がそこにはっきり書いてあるのぅ?
東堂: はい 書いてあります
大前田: 何事にも規定を盾にとって上官に盾を突いてきた東堂が、自分で規定を破ったとじゃけん こりゃ どうんこうんどこにも逃げ道がないのう (内心喜んでいそうな大前田)
東堂: 外出はまったく東堂のまちがいでありました (東堂はこう言わざるを得ない、悔しいけれど。あぁ~あ)

東堂が「内務書」の規定をまっこうから破ったじゃけん、今から、班長が東堂に罰を食わせる みんな!よう見とけ!
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「私は、私が食らった平手打ちの数を六十四まで数えて、その後は数えなかった。私の顔面が麻痺したのか、私は、仕舞いごろ、ほとんど痛みを覚えなかった。」



4月10日 生源寺、曾根田、鉢田、村田、白水、冬木らがそれぞれの転属先へ向かうべく出発。東堂や吉原、他7名はそのまま鶏知聯隊本部に残り、日日の使役に付いた。


写真4月16日 吉原を見かけないことを不審に思い市丸二等兵に訊ねた東堂に、吉原が東京で何件かの詐欺事件を起こしていたことがわかり、逮捕・連行されたこと伝えた。市丸が、東堂に渡してくれと吉原に頼まれた手紙には、あの「剣鞘毀損・すり替え事件」の犯人は自分だと書かれている。


4月17日 夕食後の自由時間に村崎古兵がやって来た。東堂が「下重(下関重砲兵聯隊)」への配属希望が受け入れられず聯隊本部に残留となった訳を調べてくれるように頼んであったが分らないという。「きっと特別な訳があるとじゃろうが・・・どうしてもわからん」

「そりゃそうと、お主、面天奈の食料運び使役に出る気はないや。明後日俺が使役で行くことになっとる。」「はい、行きます。連れて行って下さい。」



夕食後、仲間と雑談をしていると仁多班長の手伝いをしてきたという市丸二等兵が戻ってきて、仁多班長が完全武装で出かけたと告げる。「面天奈火薬庫へ行ったのじゃないか、何か変事が起こっとるらしい。」

・・・こんな夜分に下士官(仁多軍曹)が完全武装で面天奈衛戍(えいじゅ)衛兵所へ出向くという事は、その下士官(仁多軍曹)が面天奈における現衛兵司令(大前田軍曹)の交代要員であるという事ではないのか。それは、面天奈火薬庫における現衛兵司令(大前田元新砲廠第三内務班長)に関して何か変事(たとえば急病)が発生したという事ではないのか・・・


東堂は、1月中旬(実際には2月11日の紀元節)以来、あの時の「人間を踏みつけにしたこげな有様がこの先続きよったら今に見とってみろ。広田(首つり自殺をした大前田の戦友)の”戦病死”だけじゃ事は済むもんか。もっと恐ろしか大事があっちこちに持ち上がるじゃろう。うんにゃ ”持ち上がるじゃろう”じゃない おぉ、俺は言い切っとくがきっとそりゃ持ち上がる」という大前田軍曹の言明を、あたかも大前田軍曹、または私、または我々教育召集兵の前途に現れる禍々しい何者かの前触れとして持ち続けていた。


そして・・・







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漫画「神聖喜劇」 ~第六巻~ ② :: 2019/02/20(Wed)

【第八部 永劫の章】 「模擬死刑の午後 一、二、三」

事件の真相や誰が犯人だったのかは不明のまま、「剣鞘毀損・すり替え事件」は2月27日に一応、治まった。そして3月18日。三個連合体は高浜演習砲台での半日訓練の後、16時30分まで構内での休養を与えられた。仲間と少し話してその後知らぬ間に寝入った東堂の耳に、上等兵たちが新兵をいじめている声が入ってきた。生源寺や橋田に聞いた話はこうだ・・・

第一班の末永二等兵が砲台構外に出て、民家の軒先から干しイカを失敬した。まわりから”ガンスイ(のろま)”と呼ばれていた末永は上官上級者たちの格好の”座興のなぶり者”となり、仁多軍曹は銃を持って来いだの、隊長殿に指示を仰ぐから携帯電話機を持って来いだのと部下に命じる。「末永が悪くありました。もう二度としませんから・・・」と木に縛りつけられている末永は泣いている。


上等兵たちの輪の中に居た大前田がすっと立ち上がってその場を離れた。生源寺や鉢田は何か今日の大前田軍曹はいつもと違って浮かない顔をしているように見える、こういう事にはすぐに乗り気になりそうな軍曹なのに、どうしたのだろうかといぶかる。

そのうちに、電話機で隊長と話している振りをし、「死刑にしろ」と隊長が言っているという芝居が始まった。教官殿が来るまで予行演習だと「構え銃(つつ)」「立て銃」と銃剣を末永に突きつけるのだ。何とひどいことをするのか!


写真もちろん東堂は黙っていられない。頭の中で、ドストエフスキーの「白痴」に出て来るムイシュキン公爵が言った言葉が渦巻く。死刑執行の宣告が死刑囚に与える”間近い死(短時間内に殺される事)の確実な認識”、その認識が人間に齎す”恐ろしい(この世で最も強烈な)苦痛 。 ”殺人罪によって人を死刑にするのは当の犯罪にたいする甚だ過当な刑罰です。宣告を読み上げて人を殺すのは、強盗殺人などよりも遥かに残酷な行いです。” この恐ろしい苦痛をムイシュキン公爵もドストエフスキーも「人間の魂にたいする侮蔑凌辱」と呼んでいた。

「一から十まで虚偽虚構に基づいて、しかも当人の先天的低能を玩弄する事によってまさしく私の目前に、出現し、現存した・・その”人間の魂にたいする侮蔑凌辱”を黙視している事は、ついに私に耐えられなくなってしまった。」(相変わらず回りくどくって、こねくり回したような言い方だけれどカッコいいよ、東堂。テイクも黙っていられない!)


おおっ!冬木も黙っていなかった。
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ここで東堂の頭に浮かぶのが・・・

「身心放下」
(しんじんほうげ)
「百尺竿頭、如何ガ歩ヲ進メン」
(ヒャクシャクカントウ、イカンガホヲススメン)


- 執着を捨て、百尺の竿の先からさらに一歩進めて宇宙と一体になれ -
身も心も捨てて一歩前に進め・・・と云う事?

(難しいなぁ。だけど勉強になるよ、東堂。)





「人のいのちを玩具にするのは止めて下さい。人のいのちは何よりも大切であります。」と訴える冬木に仁多班長は、人を死なせたことのあるお前に ”人のいのちをどうとかこうとか” もっともらしいことを言う資格はない!と怒鳴る。


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「軍人がそげな事言うとっても成りたちゃせんぞ」
「お前は、戦地でどっち向けて鉄砲を撃つつもりか」
「前向けてうしろ向けて撃っても人が死ぬじゃろうが。戦地に行ったらお前はどうするとか」

「はい、鉄砲は・・・
前とかうしろとか横とか向けてよりほか撃たれんとじゃありません。
鉄砲は・・・上向けて、天向けて そりゃ撃たれます。」


この後、冬木と東堂二人は、末永が無罪放免となるのであれば身代わりになるのは全く厭わない、と仁多に申し出た。その時、村崎班付は第三班の二等兵たちに、この二人が身代わりに立って罰を受けようとしているのに第三班のみんなは何もしないのか。自分も身代わりになろうという兵隊は名乗ってこの二人の左翼に並べ!!と告げると、「橋本二等兵も身代わりに立ちます」「鉢田二等兵も同じであります」「白水二等兵も・・・」「生源寺二等兵も・・・」と第三班全員が並ぶ。

さらに村崎班付が「おい、第一班の兵隊。お前たちと同じ班の戦友末永のために余所の班の兵隊がこげん大勢身代わりを志願しておると云うのに同じ班のお前たちは身代わりにならんのか!」「第二班の兵隊はどうじゃ・・・」と叫ぶと第一班、第二班の兵隊たちも身代わりになろうと集まる。


そこへ現れた(あの理想主義者の)村上少尉。
村上少尉: 「お前は”党与抗命罪”を新兵に”教唆”しているのだぞ」
村崎班付: 「”抗命”?”抗命”とは上官の命令に反抗する、または服従しないという事でありますか」
村上少尉: 「そのとおり」
村崎班付: 「そんならこの場の有様は”抗命”なんかにゃいっちょも関係ないであります」
村上少尉: 「口が多すぎるぞ、村崎!表向きの辻褄合わせの事ではなく精神の事を、村上は問題にしているのだ。そして、冬木が表明したのは最も悪質な敵性思想だ」

東堂の心のうち: 村上少尉の”広義理想主義”的触角は、冬木の言説から”最も悪質な敵性思想”を鋭敏にも感受し、合せて村崎古兵を”党与抗命罪”の”教唆犯”または”首魁”と見做したとたんにたちまち鈍磨し、仁多班長らの至極没義道な”むさきたなく候”振る舞いには、不感症を発したとみえた。
(ふぅ~難しい言い回しだ。 没義道(もぎどう)=人の道に外れてむごいこと)


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とにもかくにもこの大騒動は村上少尉の出現で幕となり、村崎や東堂、冬木、橋本、末永らは重営倉の処分となった。村崎・8日間、東堂、冬木・3日間、橋本、末永2日間。(営倉は大日本帝国陸軍に存在した、下士官兵に対しての懲罰房のこと)



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漫画「神聖喜劇」 ~第六巻~ ① :: 2019/02/19(Tue)

【第八部 永劫の章】 「回想 一、二」「八鉱山中腹の路傍 一、二」

2月26日、いよいよ東堂が 「剣鞘毀損・すり替え事件」の真相を追求するべく動き始める。冬木に話を聞く前に班附の村崎一等兵に相談を持ちかける。村崎一等兵が見聞した上級上等兵たちが冬木を犯人と特定している根拠は、冬木が前科者・部落出身者と云う事だけではなく、吉原が片桐伍長に告げ口した2月21日の夜の不寝番勤務中に起きたことだった。その後、東堂が冬木に21日夜のことを問うて吉原の言っている事とのくい違いが初めて明らかになった。


写真〔村崎一等兵が東堂に語ったこと〕
21日の不寝番に服務したのは冬木、鉢田、吉原、菊地の4人。吉原と冬木が組んで見回りをしていた時、突然冬木の持っていたカンテラの火が消えた。二人ともマッチを持っていないので吉原が自分の手箱まで行ってマッチでカンテラに火を付けて帰ってきたら冬木がいない。東西通路を行ったりいたりして冬木を探している時にまた火が消えたので、西方潜り戸で立ち番をしていた菊地に近づきマッチを借りようとしたが菊地は持っていない。そう言えば今便所に行っているのは何人かと吉原は訊き、菊地は第二班の田代一人だけだと答える。やがて吉原はカンテラに火をともして東西通路から食堂北側を通って東方で立ち番をしていた鉢田の所へ行き、冬木が居なくなった・・・と告げる。

吉原が片桐に注進した話の一部には菊地と鉢田の二人の証人がいる
15分から20分くらいの一定時間、冬木が吉原と独行動をしていた
菊地と鉢田が立ち番の時に便所に行ったのは第二班の”田代二等兵”だけだった
そして第二班には”田代”と云う二等兵は存在しない
冬木が舎外に出るのに”田代”という偽名を使ったのではないか



写真〔冬木が東堂に語ったこと〕
「吉原は嘘ばっかりを言うたとじゃない。ほんとにあった事の要所要所に作り事を程好う填め込んで話したとのごたぁる。」

冬木と吉原が何回目かの巡回で南側通路に出たとき冬木は腹痛と大便をもよおしこらえきれなくなった。そんな冬木に吉原が、外套と銃剣を冬木の寝台に置いて西の潜り戸から便所に行って帰りは東の潜り戸からはいって来い。菊地に名前を訊ねられたら第一班の”何とか二等兵”と答えること。((第三班じゃ見破られる恐れがある。)カンテラを持っていた吉原がわざと火を吹き消して菊地にマッチを借りることにするが、菊地は煙草を吸わないからマッチを持っていない、カンテラの灯がなければ便所に行くのが冬木だとわからないだろう・・・・

カンテラを持っていたのは冬木ではなく吉原だった
便所へ行っている間冬木の銃剣は冬木の寝台の上にあった
立ち番をしていた菊地に今便所に行っているのは何人かと訊ねる吉原の不自然な言動



兵舎裏の八鈜山の中腹で東堂、冬木、橋本の三人でこの事件への対処の方法を話し合った。吉原と冬木のそれぞれの言い分を上官たちの前で述べさせればいいのではないかと、橋本が提案するが、確実な証拠を握ったり証人を見つけたりすることは自分たちにはできないだろうし、部落出身だの前科者だのと差別視している上官たちは冬木の言い分を信じないだろう、「冬木にも落ち度があるから、非を認めそれを正直に上官たちに告げる事から始めよう。」と東堂が言う。「勤務中に部署を離れたことについて、その夜間の実情、吉原とのいきさつすべてを洗い浚いありのまま班長達にぶちまけるのですよ。」もちろん東堂の頭の中には、それに対する班長たちの反応は見えているし、次の手をどう打つかまで組み立てられている。(どう展開するのだろうとワクワクドキドキする。)

2月27日、冬木はあの晩に起こったことを勤務中持ち場を離れたことも含めて正直に班長に告白したが、案の定、班長たちは今頃言い出すのは何か裏があるのじゃろうと信用しない。最初から全部を告発していた吉原は氏素性も正しく教育程度も高く前科などもなく善良な国民であるのに対し、冬木は陰険に土壇場まで隠し立てをし、氏素性もいかがわしく教育程度も低い。そして善良な国民ではなく前科者だ。どちらが信用するに足るか、問うだけ野暮なことだ・・・とまあこんな調子だ。

先入観に囚われて真実を見ようとしない情けない奴らだ、いかがわしい氏素性って何なのよとテイクは一瞬憤慨したけれど、もしテイクがその場に居たら氏素性や前科があるという要因で吉原より冬木が怪しいと思ってしまうかも知れない。
否、絶対そうはならなぞ!という自信が、あるような無いような・・・。ああ、自分も情けない奴らの一人になる可能性があるかも知れない?嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ・・・・


次に打つべき手は、「軍隊内務書」第二章「服従」第十を根拠にした冬木による「上申」の実行だ。
『自己ニ対スル他人ノ取扱不条理ト考フルトキハ徐ニ順序ヲ経テ之ヲ事件関係者ノ直上所属隊長ニ上申スルハ妨ナシ
但シ兵ニ在りテハ要スレバ直接特務曹長(准尉)ニ上申スルコトヲ得又上申ハ二人以上共同シ若ハ勤務中ニ於イテ之ヲ為スコトヲ許サズ』


そして、「内務書」第二章「服従」第九に準じて東堂が”意見具申”を実行する。
軍隊ヲ裨益スルニ足ルト信ズル所ハ上官ヲ輔佐スルノ至情ヲ以ッテ進デ之ヲ上官ニ開陳スルハ各級ノ軍人 特ニ幹部ノ責務トス』

『直接特務曹長(准尉)ニ上申スル・・』はこの場合山口准尉であり、山口准尉は東堂の意見具申中も何度も部屋を出て堀江隊長や片桐伍長の指示を仰いでいる模様だ。以前橋本が、吉原らしき人物が不審な場所で不審な動きをしていたと報告したことを上官たちが黙殺していることへの疑問も東堂は述べた。するとここでまた「部落出身」云々が出て来る。「橋本は九州水平社同人の井浦正五郎の甥で」「その橋本が部落出身の冬木に有利な証言をしても信じられんのは当然じゃないか。」と云うのだ。

その後、上級上等兵らがどのように話し合い結論を出したかの道筋はよくわからないが、27日の夜、神山上等兵は冬木に対する取り調べの中止を伝えた。基本的には東堂の想定通りに冬木の「不条理上申」と東堂の「意見具申」が奏を効したようだ。



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東堂は冬木が橿原出身で執行猶予中の傷害致死犯―それも正当防衛だということを知っていると打ち明け、一緒に「剣鞘毀損・すり替え事件」の真相究明をしたい、「夕食後に俺たちと話そうよ。」と誘った。冬木は少しずつ生い立ちを話し始める。辛くて悲しい話だ。
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「夕食後にゃその心組みでおるよ。

いま思や、こっちから頼んでそうしたかった、ちゅうとが俺の心底の本心じゃったごたぁる。

今日までそうせんじゃったとは、東堂とか橋本とかに橿原生まれの事、執行猶予の事なんかを隠したがっとったとじゃ全然なかった。

― 誘うてくれてありがとう。」





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「明日へ ~戦争は罪悪である」 :: 2019/02/18(Mon)



1932年(昭和7)、日中戦争から太平洋戦争に向かう戦争の時代の瀬戸内の小さな島。
噺家になりたい13歳の純次(松田優佑)の背中を押したのが良善和尚(中原丈雄)だった。東京へ弟子入りし落語家となった純次(小倉レイ)は、出征のため6年振りに里帰りし和尚と再会するが、境内での出陣式で、良善は突如「戦争は罪悪で人類に対する敵、すぐにでも止めたほうがええ」「逃げて帰って来い。人殺しはするな」と説教を始める。

それまで戦争に協力する説教を語っていた良善のこの変化には何があったのか……。



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「那須野が原九条の会」と「栃木県北市民ネット」の応援上映「明日へ ~戦争は罪悪である」を観てきた。1月30日のこのブログでもご紹介した映画だ。実話に基づいた映画。
戦争が始まって世の中は「アジアの平和を守る皇国・大日本帝国の為に命を投げ出す」ことが当たり前という空気に包まれている。良善和尚やその他の多くの寺や僧侶は地域の人々にそう説いて回っていた。仏教の教えの「不殺生」を「一殺多生(一人を殺すことで多くの命を生かす)」と解釈していたのだ。お国のためなら敵国人を殺すのもやむを得ないと言ったところだろう。徴兵検査に合格するよう読み書きを教え、国を守るのは母親のためだと言い聞かせ、知恵遅れの少年を戦争に送り出したのも良善だ。

その数年後、「人を殺すな」「生きて帰ってこい」と諭す和尚に不信感を抱いた純次は、和尚を投げ飛ばして出征した。良善和尚の考えが180度変わったのはなぜか。知恵遅れの少年が戦死して、一人残された母親が「息子を殺したのは和尚だ」と言って首つり自殺をする。戦争反対の考えを持つ”植木徹誠”和尚と知り合うことにより、良善は地域の若者たちを「お国の為に死んで来い」と言って戦争に送り出していた自分を反省し、それからは「戦争は罪悪である」という考えで出征する若者たちに「人を殺すな。生きて帰ってこい。」と送り出すようになった。憲兵に連行され尋問を受けもしたが考えを曲げることをしなかった。「戦争反対」とは言わず「戦争は罪悪である」と言い続けた。


戦地で戦争の現実を目の当たりにした純次は、日本のやっているのは聖戦ではない、ただの殺し合いだったと悟って終戦一年後に帰って来た。その後は、絶対に戦争はいけない、自分の頭で考えて行動しなければいけないと訴える落語家として行動した。

老人施設に入居中の純次は、テレビで国会前の「戦争法案絶対反対!」と叫んで集会、デモをする人々の姿を観て居ても立っても居られず、職員に戦争の話を訥々と話して聞かせる・・・。

国会前の実写の映像の声、シールズを始めとする若者の”コール”を聞いて、あの頃(2015年)ある新聞に掲載された88歳の男性の投書を思いうかべた。(テイクの2015年の手帳に貼りつけて保存してある。)


 安保法案が衆院を通過し、耐えられない思いでいる。だが、学生さんたちが反対のデモを始めたと知った時、特攻隊を目指す元予科練(海軍飛行予科練習生)だった私は、うれしくて涙を流した。身体の芯から燃える熱で、涙が湯になるようだった。オーイ、特高で死んでいった先輩、同輩たち。「今こそ俺たちは生き返ったぞ」とむせび泣きしながら叫んだ。

 山口県・防府の通信学校で、特攻機が敵機に突っ込んでいく時の「突入信号音」を傍受し何度も聞いた。先輩予科練の最後の叫び。人間魚雷の「回天」特攻隊員となった予科練もいた。私もいずれ死ぬ覚悟だった。

 天皇を神とする軍国で、貧しい思考力しかないままに、死ねと命じられて爆弾もろとも敵機に突っ込んでいった特攻隊員たち。人生には心からの笑いがあり、友情と恋があふれ咲いていることすら知らず、五体爆裂し肉片となって恨み死にした。16歳、18歳、20歳―。

 若かった我々が、生まれ変わってデモ隊となって立ち並んでいるように感じた。学生さんたちに心から感謝する。今のあなた方のようにこそ、我々は生きていたかったのだ。
(京都府 88才 無職 加藤 敦美)


2015年の国会前での抗議行動で、シールズの一人がこの投書を紹介した。「戦争は絶対に嫌だ。平和な世界をつくりたい。」その一つの思いを持つ人々が日本国憲法の平和条項を守り続けようとしているのだ。その決意を今一度噛み締める時ではないだろか。




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漫画「神聖喜劇」 ~第五巻~ :: 2019/02/15(Fri)

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【第七部 連環の章】
上等兵の部屋に新兵たちが呼び出され尋問を受けている。何が起こったのか新兵たちはあれこれ情報をかき集め半分噂に近いひそひそ話で広がっていく。だんだん明らかになって来たのは、剣鞘(けんざや)毀損・すり替え事件が起こったらしいということだ。三個班の全員が”事件の関係者”ということで上官たちの取り調べを受けているのだが、犯人は「前科者」であり「部落出身者」の「冬木であろう=冬木である」という答えを導き出すかのような尋問をされている。要するに冬木の怪しい行動を見なかったかと新兵たちを問い詰めているに過ぎない。

東堂は冬木が入隊前に起こした事件について調べてくれるよう検閲を免れるような表現で昔の新聞記者仲間に依頼し、その返事を心待ちにしていた。返って来た手紙の内容はこうだ。

冬木の恋人に横恋慕した男が、部落出身(橿原出身)という冬木照美の身上にイチャモンをつけた挙句、仲間を引き連れ冬木を襲った。取っ組み合いになり冬木は横恋慕男を引き倒しその場を逃れるのだが、その男が数日後に脳内出血で死んだことを知る。冬木は自首し、官選弁護士がつけられ裁判となった。そして、有罪、執行猶予3年の判決が下され、執行猶予中の身で召集されたという状態だ。
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昭和十五年四月に秀巧堂を解雇されたのは
その前の月の事件のせいであった





「ある犯罪が発生した場合、その直接間接の関係者の中に前科者あるいは素性のあやしい者が見つかったらたいがいそれが犯人だ、と言うのが常識的事実だろう。」と言っていた片桐伍長にどうやら告げ口をした新兵がいる、それはあの吉原二等兵ではないかと思うのだがと、鉢田二等兵が東堂に相談する。取り調べのために呼ばれた上官室に入った時、片桐伍長がコソコソと「吉原がどう言った」とか「吉原からこう聞いた」と話しているのが聞こえたというのだ。

その夜の夕食時に神山上等兵が、動かぬ証拠も本人の自供自白もないのに「犯人の目安はほぼついている」などと言ったことは実に”不都合・不条理な”言いぐさである。 鉢田の信頼に応えられる自信は余りないけれど、上級兵たち(軍)が不都合・不条理にも冬木を犯人、あるいは重要容疑者扱いにすることにたいしては精一杯あらがおうと東堂は決心した。・・・だが、吉原が密告した事実も片桐伍長がそれを基に火付け役となっている事実も十分に確認できていないのが苦しい。今後、冬木にももっと積極的に働きかけていこうと鉢田に言い、冬木照美を心配する第三班の仲間たちと共に「剣鞘毀損・すり替え事件」の謎解きを始めた。


・・・・・・・・・・・・・・・・


この片桐伍長は、2月8日、東堂が生源寺と共に使役を命じられ中隊長事務室で二百名近くの兵の氏名を毛筆で書くにあたって小手調べに二種類の漢文を書いて丸めて塵芥箱に捨てたものを拾い出し、その内容に不信があるとして東堂を喚問するために呼び出した。この場面がまたもや滑稽なのだ。



要するに、一つ目の芥川龍之介のかな交じりの文章の片桐の解釈が間違っていることを指摘し、ふたつ目の漢文を”支那人”の作ったものと思い込んでいる片桐に、それは”支那人”ではなく、九州の画家・田能村竹田の作であると正す。(イェ~イやったぜ東堂!と云う感じ。)

で、ここでまた東堂の反論が始まる。「その芥川の文章『白眼当世に傲り 長嘴後代を待つ 亦是鬼窟裡の生計』は、そういう上に盾を付いたりそっぽを向いたりする生き方も否定しているのであって、それは『亦是鬼窟裡(きくつり)の生計のみ』 すなわち偏見にとらわれた狭苦しい世渡りに過ぎないと言っているのであります。」「鬼窟とは鬼が済んでいる洞窟のこと。ここでは俗世間から隔絶した境地と云うくらいの意味でありましょう。”鬼窟裡の生計”とは、そんな視野狭小な境地の中で暮らしている事をその本人としては気宇広大な孤高の生活と錯覚しているというような場合を指すのではありますまいか。」(おぉおぉ勉強になるなぁ。とは言ってもこれが芥川の書いたものかどうかは不明。

東堂の解説に目をむきながらも尚も片桐は田能村竹田の漢文の解釈を述べる。「自由奔放な人間はこの世のあらゆる”樊籠(はんろう)”を嫌悪する。軍隊のような規律の几帳面な秩序正しい場所は自分勝手な人間にとっては”樊籠”すなわち牢獄とおなじであるというのが、竹田作漢文の中心的内容で、同時に東堂があたかもその文章を思い出して書いた事の客観的意義だ――」 と。

東堂二等兵: しかし、”自恣ニシテ世ニ樊籠有ルコトヲ解セズ”という文句は人間に関して書かれたのではなくて猿に関して書かれたのであります。
片桐伍長: 何?”猿”?人間のことではない?どうしてそれがわかる?
東堂二等兵: 竹田はその一句だけでなくその一文全部を猿を対象にして描きました。その漢文は、竹田が描いた「群猿図」に竹田自身が添えた讃でありますから。

どうよ参ったか片桐伍長~!と拍手喝采をしたくなる。
(本当に田能村竹田が「群猿図」を描いているのか、これが本当に竹田が添えた讃なのかの確証が見当たらないのだが。)

・・・・・・・・・・・・・・・・




片桐伍長の嫌がらせや「剣鞘毀損・すり替え」事件の謎解きと並行して、新兵教育で東堂に絡んでくる大前田軍曹とのやり取りも二人の人間性の「良い面」が交錯して面白い。


2月24日午後、野砲分隊教練。
6人一組で三十八式野砲を扱う。東堂は学科試験で満点以上の成績で二番砲手(眼鏡をのぞき目標を捕え呼号し、発射の号令が出るまで目標を狙い続ける。)に選ばれたが、大前田にはそれが面白くない。事あるごとに「軍人精神が入っとらん。照準操作は正確でなければ何の役にも立たんぞ。」と怒鳴りつけた。

が、東堂がそれに対して「はい」と答えただけなのには訳がある。班長班附の模範分隊教練を見学した時の大前田の見事な二番砲手としての腕前を目の当たりにしたからだ。毎日練習を重ねたがまだ大前田には適わないだろうと考えた。「あんなに優れた腕前の大前田なら自分なんかの操作に文句を付けても仕方がないかも知れない、そうする資格が確かに彼にはあるようだ」と東堂は素直に認めた。

そして、三度目の操作でまたもや大前田の叱責を受ける。しかし今度は、点検のやり方が間違っているのではないかと東堂は異議を唱えた。照準を合わせても班長が二番砲手を押しのけて眼鏡をのぞく間にも目標は移動しているのだから、縦線からずれているのは当たり前ではないかと主張する

東堂に、「ふぅむ、よしそれは班長のあやまりじゃった 取り消す。縦線と照準点の関係は今お前の説明したごたぁある事じゃ。」(何と潔いことよ、大前田軍曹!)東堂も胸の内で”その一種の公明正大な精神の活動”に感動し、当たり前のことなのだけれども滅多にないことなので”その偉大な魂が人にむかって胸襟を開くのに接する事ほど真の暖かいよろこびの源泉は、他にこの世の中にない”という一節を思い浮かべたのだ。

2月24日夜。
大前田は東堂を呼びつけ、「実弾訓練も近くなったが、東堂も教練の操作はよっぽど上達したごたぁあるばってん、おまえの操作にはやっぱり軍人精神が入っとらんぞ。」「軍人精神の入っとらん奴が火砲を扱うとその奴が日頃優秀なごたぁってもじゃな・・・・」延々と続く嫌味の中に「軍人精神の入っとらん」という言葉が何度も繰り返され、「そげな奴の本性は実弾射撃になればすぐにわかる。」と睨まれた東堂は「はい、実弾射撃になればすぐに明白にわかります」と胸を張った。(これもドキドキする場面だ。東堂カッコいい~!でも大丈夫か?)

3月10日、実弾射撃訓練。
三個班二十一個分隊が一発ずつ順々に射撃した。”実弾”ではなく代用弾で”野砲の花”二番砲手の腕を振るう場所は余りないように見える。一番・仲原、二番・東堂、三番・生源寺、四番・冬木、五番・鉢田、六番・橋本の七分隊は最後の射撃だ。日ごろの大前田と東堂との対立因縁を承知している彼らの”連帯責任”や”負けじ魂”が溢れていた。結果は命中!それまでの20発には命中弾とみなされるものが一つもなく、さすがの東堂も胸の高鳴りを覚えた。




その夜の第三班第七分隊の面々は上機嫌で陸軍記念日の加給品の清酒を飲み交わしている。そして日夕点呼前の大前田班長の訓示。「第三班はようやった。第一班にも第二班にも負けんじゃった。特に東堂二番砲手の操作はずば抜けとった。東堂も他のみんなもこれで気をゆるめんで残りの教育期間も気合を入れて一生懸命やれ、ええか!」

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いよいよ物語は第六巻のクライマックスへと進み完結する。
この後の二人はどうなるのだろううか・・・・・。

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「私の気分のよさは、大前田の言葉で増加せられ、またもや大前田が見せた”一種の公明正大な精神の活動”が私を感動させた。」





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漫画「神聖喜劇」 ~第四巻~ :: 2019/02/13(Wed)



【第五部 雑草の章】
登場人物が少しずつ増え、個性描写も具体的になる。紀元節の午後、三個班連隊は初めて営門の外に出て対馬の小さな村・大船越へ向った。東堂たちは道中の景色を眺め、対馬名物と言われる「女の馬乗り」ともすれ違い、いつか村崎古兵が話していた”百姓の女子衆兼業の女郎”の野良仕事姿がこの奥に見えるかも知れぬと思い描きながら目的地を目指す。

目的地の大船越で30分ほどの自由時間が与えられ、東堂、生源寺、白水、橋本の4人で連れだって集落をぶらつく。縁先で日向ぼっこをさせてもらおうと民家に声をかけて、のんびりと寛ぐ二等兵たち。一カ月ぶりに羽を伸ばし「久しぶりにいくらか人間にもどった気がするよ」「うん、人間のような気分になったごたぁる」「ああ、そげな感じのする・・・」おまけに家人がお茶とつきたての餡餅を出してくれて無邪気に喜ぶ仲間たちなのだが、数日すれば旧正月だと気付いた東堂は、縁先を借りたことで変な気遣いをさせてしまったと心の中で反省する。(ここがまた東堂らしい。)そこへ同じ三班の吉原二等兵が横柄な態度で交じってきて餡餅をぱくぱく食べるだけ食べ、「たった十五個しか出さないとはケチだなぁ。もっとたくさん出しゃいいのにさぁ」と減らず口を叩いて行ってしまう。東京の学校を出たことを鼻にかけ、「○○なのにさぁ」などと東京弁を使う嫌な奴なのだ。この吉原が今後、この物語の中で起きる事件に深く関わっているのだが、この時にはまだわからない。

軍隊の中でも一般社会と変わらず職業や高等教育を受けているかどうかや階級階層序列・・・で区別差別する意識が強い。あいつの職業は云々かんぬん、あいつらは上級学校出だ、あれは床屋だった、こっちは印鑑彫りやった・・・・「みんな同じようなもんよ、あいつらだって職人と言って人を軽蔑できるような柄じゃじゃねぇ・・」「職人と言ったって四つなんかじゃなし、どこちゅうて普通と違ゃせんもん」

まるっきり社会の縮図だ。入隊の夜に早くも東堂は「学校出閥」が形成される必然性を感じ取っていた。職業差別だけではなく根強いのは部落民差別だ。そんな空気を背景にして、なにやら不穏なことが起こっているらしいという噂話がヒソヒソと囁かれ始めている。第一班から独りずつコソコソと上官の部屋に呼ばれていく。何があったのか?



【第六部 迷宮の章】
入隊直後から大前田軍曹に目をつけられている東堂は、一分の隙も大前田には見せないように心がけていた。嫌がらせで大前田が東堂に銃剣の部位名を次々に言わせる。全てを完璧に言い当てた東堂を面白く思わないが、ムムムッと思いながらも大前田は何も言えなかった。東堂の一挙一動に目を光らせている大前田の存在のあるなしに関わらず、東堂は練兵に極めてまともに取り組むようにしていた。意識的に身構えていた東堂の技術面に難癖がつけられなかった大前田軍曹は、「気合が入っていない!」「軍人精神が入っていない!」というような主観による言い方をするようになっていくが、それを防ぐ術は東堂にはない。


何か起こっているらしいが、班兵たちにはよくわからない。冬木二等兵が繰り返し上等兵の部屋に呼ばれて尋問を受けているようだ。東堂は詳しくは知らなかったが、冬木は部落出身者で入隊前に正当防衛で人を死なせてしまうという事件に関わっていた。それが班内で起きたある事件の犯人として疑われる「証拠」になっていたのだ。



室町二等兵:「そういやぁ、冬木の面つきやらなんやらはたしか一風変わっとるぞ。ありゃ新平民の顔のごたぁる。だいたいあれちゅうじゃないや。もともと特殊部落は俺達とは違う人種じゃないや。」
東堂二等兵「そんな事はないよ。違う人種とかなんとか。”新平民の顔”なんてそんな物もあるはずはないだろう?」
生源寺二等兵「そうだな。”違う人種”だの”新平民の顔”だのそんなの無意味な事だな。顔つきの事なんか見る者の気のせいに過ぎない。世間にはいろんな面相があるからね、おなじ日本人でも。」

東堂を中心に集まって「事件」の真相をあれこれ推理しながら、部落民への差別、人種の問題に話が及ぶのだが、東堂と生源寺の冷静な考えが仲間の差別意識を諌める場面に読者は救われる。

生源寺二等兵「俺はあまり深いことは知らんが・・・・午前中室町は”どっちみち、印判屋とか床屋とかちゅう商売やら職人やらを軽蔑しとる奴らは軍隊にも地方にもたくさんおろうね”と言って村田もそれに賛成しとったな。ある人間たちが生まれやら職業やら財産・収入の多い少ないやらをもっぱら種にして他の人間を見下げる、他の人間たちに分け隔てをするというような世の中の風潮とか仕組みとかの行き着いた果てに特殊部落の四つのなどとおかしな物が作り出されたのだろう。とにかく”違う人種”だの”新平民の顔”だの無意味な事だよ。”天は人の上に人を作らず、人の下に人を作らず”じゃないか。」生源寺の発言は東堂にとって強い味方だ。



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一方、上等兵たちの取り調べは先入観念を基に続けられ「犯人」を作り上げた上で班兵たちの「証言」を集めている。思い当たることがないと答える班兵に「こういう事は地方でも軍隊でも概して同じだが、ある犯罪が発生した場合、その直接間接の関係者の中に前科者あるいは素性のあやしい者が見つかったらたいがいそれが犯人だ、と言うのが常識的事実だろう。」などと云って班兵たちをそそのかすのだ。




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漫画「神聖喜劇」 ~第三巻~ :: 2019/02/12(Tue)

【第三部 運命の章】
大前田文七軍曹は、南方で戦った経験がある。「人を殺して何が悪いか!」と新兵を前に、どんなやり方で自分が「支那」の民間人を殺したか、逆に「支那」の軍隊が開拓村の日本人の民間婦女子を強姦虐殺した様子を語る。「戦争などと云うものは綺麗ごとではすまないんだぞ。殺して分捕る、それが戦争だ。」大前田軍曹は「戦争」というものの本質を見事についているではないか。

それを漏れ聞いた村上陸軍少尉は、大前田を諌める。(「村上少尉は一日も早い南方前線部隊への転属を希望する「戦陣訓」で言うところの”質実剛健” ”清廉潔白”の生きた手本じゃ”」と村崎内務班班附は村上少尉を湛えている。)

「平和を愛好し正義を尊重する大日本帝国は、・・・・・皇国本来の平和的精神に則って、敵国人といえども敵性を持たない者にたいしてはその人命に何らの危害を加えることはない、安んぜよ、これが大日本軍司令部の『布告』の内容である。わが軍が南方戦線で実行しつつあるのは、そういうことだ。村上はそう信じる。」


写真村上は更に、「日本軍がフィリッピン首都マニラに入城したのは1月3日午後だ。マニラは、長い年月合衆国の太平洋政策ないし援蒋(えんじょう)排日の重点であった。同3日夜のラジオはいやしくも国軍将兵にして略奪暴行虐殺等をあえてした者はただちに厳罰に処せられるべき旨の軍司令官布告が発せられてマニラ市内の治安は完全に維持されていると放送した。」「翌4日朝刊には国軍に感謝する住民たちの実況を報じ、合せて陸軍報道部大平大佐殿の談話を掲げた。たとえばウェーキ島における、たとえばマニラにおけるかくのごときが皇国の戦争目的であり皇国の真の姿である・・・と村上は信じる。」と、大日本帝国の”平和を愛好し正義を尊重する”姿を湛える。そして「大前田軍曹、異見があるか。あるならば聞こう。」と水を向けるのだ。


・・・・・・・・・・・・・・

この「比島首都マニラ完全に占領」と大見出しのついた1月4日の朝刊を東堂はこの日を最後に辞めることになっている新聞社の机の上に広げ読んでいる。ここから60頁ほどを使って東堂と彼女(料亭「安芸」の女」)の逢引の場面が挟まれる。

逢引の場面でも東堂のあれこれ持ち出して考え込む性癖は引っ込まない。彼女を目の前にしてかつて読んだ詩だの和歌だのを思い浮かべ、彼女の提案した「剃毛」に応じ、それが二人の行為に与えた影響などをあれこれ「論理的に」考えたりしている。オイオイ君ぃ~と言いたくなったよ。(こう感じるのはテイクだけではなく、第二巻の解説で三浦しをん氏も「東堂が大変素敵な男性であることは間違いないが、情事のあいだすら捨て去らぬ生真面目さと分析癖を見るにつけ、つきあうのはなかなか大変そうだなと思う次第である。」と書く通りだ。)

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・・・・・・・・・・・・・・


「大前田軍曹、異見があれば忌憚なく言ってよい・・・言ってみよ」と村上少尉に促され、「異見があるちゅうごたぁる事じゃありません・・・・・・ただ・・・」と言って大前田が「ただ教官殿も戦地に出られましたら少しゃまた別のお考えになられるとかもしれまっせん・・・遅かれ早かれ教官殿も南方に行かれるとでありましょうが、そしたらその新聞記事やらなんやらとはちっとは違う状況も御覧になるとじゃなかろうかと大前田は思うとります。」と応じる。

村上少尉:「いずれ南方戦線で大前田と会うことがあるかも知れないが、その時には今日の諸報道などといくらか違う状況をこの村上が見ているかどうか忘れずに遠慮せずに問うがよいぞ」
大前田軍曹:「はいもしそげな暇が、いんにゃそげな機会がありましたら大前田は忘れずに遠慮せずにおたずねしまっしょう」

なおも訓示は続き、橋本二等兵の職業が隠坊であり、同時に部落民であることが明らかになる。しかし、”清廉潔白”な村上少尉は「我々は封建時代に生きているのではない。つまり職業身分制度の下の国民ではない。したがって一般社会においても、まして軍隊においては、むろん職業に貴賤上下の別などがあろうはずはない!それは―あってはならないのだ。いずれにせよ皇国の戦争目的は何か、それはいかにあるべきか皆は理解した、と村上は考えるが、どうか。皆はわかったであろうな。」

そして、ここでもまた「喜劇」を見る。
村上少尉:「鉢田二等兵、皇国の戦争の目的を簡単に言ってみよ」
鉢田二等兵:「皇国の戦争の目的ちゅうとは、ありゃ殺して分捕る事であります」
村上少尉:「何?何?何と言ったか。橋本はわかっているな。皇国の・・・日本の戦争目的は何か?」
橋本二等兵:「同じであります。日本の戦争は殺して分捕るが目的であります」

何のことはない、村上少尉は大前田や橋本、鉢田に期せずして挫折させられ、止めを刺されたのだ。

もしもここで自分が三人目の回答者として指名されたらどう答えるであろうか・・・と東堂のは胸の内で考える。「日本の戦争の目的はかくかくしかじかであると教官は教えられました」と云う風に答えるであろうが、それはみみっちい自己慰安であろう。そして、聞き咎められ言い直しを命じられれば唯々諾々と服従するであろう。東堂は恐らく日和見的な答えをするであろうと自嘲的に自己分析をしている。前線での経験を基に大前田が導き出した「戦争の目的は殺して分捕ることだ」と言う結論に東堂は論理的に同調することが出来ないと云う事か?


【第四部 伝承の章】
「軍人が睾丸を袴下(こした)の左側に入れるというのはなぜでありますか?」という東堂の質問から、ああだこうだが続き、やがては命令と規則とがどう関係し合うか、命令で言っていることの根拠を訊くことは軍人精神に反する云々かんぬんが続く。

寒いから「これを着らせてくれりゃええとにねぇ」と内地から送られてきた肌着を手にして呟く室町二等兵に、自分たちには着用する権利のあることを説き、「内務規定」第十一章第四十一・・・・を盾に送られてきたものを着用する事を申し出るべきだと勧める東堂。こういう場合はおずおずと卑屈にではなく、堂々と潔く申し出たらば受け入れられるだろうこと、そしてそれが突破口となって新兵が必要とする時に心安く肌着や胴着、腹巻などを着用出来るようになるだろうことを伝えたが、尻込みする仲間たちを見て東堂が代表して新兵たちの一般意見として提示し神山上等兵に交渉する。

2月11日、「何が紀元節か。饅頭二個で誤魔化されるような、人間を踏みつけにしたこげな有様がこの先も続きよったら恐ろしかことがあっちこっちに持ちあがるじゃろうぅぅぅぅ」と大前田が唸っている。東堂もいずれそのようなことが起こるのではないかという予感がする。午後、大船越を目指し三個班連合体の引率外出が行われた。




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おかゆと梅干し :: 2019/02/11(Mon)

一瞬快復したかのようだったけれど、
どっこいそう簡単には行かなかった。
ビールも日本酒もいつもみたいな味じゃなかった。
だからいつもみたいには呑まなかったけれど、
その夜、酷い頭痛と吐き気に襲われた。

薬を飲むともっと気持ちが悪くなりそうで、
飲まずにうんうん唸って一晩過ごした。
昔の持病だった偏頭痛みたいな痛みと吐き気だ。

翌日も起き上がれず、何も食べずに唸っていた。
18が作ってくれたおかゆを少しと梅干しを少しお腹に入れて
唸っているしかない。

翌日もおかゆと梅干し。
頭痛は軽くなり吐き気もなくなった。
だけどビールがまずい。

気管支何とかかんとかの後遺症か?
悔しいけれど大人しくしているしかない。

おかゆと梅干しが何よりのご馳走だった丸3日間。
具合の悪い時でも美味しい~と食べることが出来るものがあって良かった。

やっと今朝になって、いつも通りの気分になり、
サッと起きて普通に家事をやるのも苦痛じゃなくなった。

編物の続きもやる気になったし、
4時からの原発要らないスタンディングにも出かけることが出来そうだ。
健康でいるのって嬉しいことなのよ。

こんな嫌な世の中だけれどあと少し生きねばなるまいねぇ。



テヘッ







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漫画「神聖喜劇」 ~第二巻~ :: 2019/02/07(Thu)


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各級軍人の責任は「軍隊内務書」「戦陣訓」においても力説強調せられてはいる
・・・とはいえこの責任とは上から下にたいして追求せられる
それのみを内容とするのであって
上が下にたいして負う・・・それを決して意味しないであろう

かくして下級者にたいして上級者の責任が必ず常に阻却せられるべき事を根本性格とする
この長大な角錐状階級系統の絶頂には
『朕は汝等軍人の大元帥なるぞ』
の唯一者天皇が見出される。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

東堂太郎:福岡県F高校卒業、(東大に5~6カ月ほど在籍した) 九州大学中退  大東日日新聞社記者。父・国継は剣道の有段者、教師。古武士的な気骨を持ち、部落民に対する不当な差別蔑視的言行を正すために聯隊に乗り込んだこともある。

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・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・



【第二部 混沌の章】
入隊して1ヶ月が過ぎた。上官による兵士に対する「いじめ」のようなものは茶飯事だ。軍事機密やら葉書の差出人の書き方などについての「指導」にはその馬鹿馬鹿しさに笑ってしまう。(が、これが軍隊というものなのだろう。)

ふるさとへの葉書に「毎日毎日大根の葉の汁ばかりで・・・」と書いた兵士に軍事機密は書き送るなと叱責し、「大根の菜が軍事機密だとは知りませんでした」と言えば拳骨がとぶ。しかし、たまに見回りにやって来た隊長の前で「大根の菜は軍事秘密」と答える兵士たちに対し、班長たちは「そんないい加減なことは言うな」と怒鳴り散らす。大前田内務班長(軍曹)は神山内務班附(上等兵)を、神山内務班附は村崎内務班附(一等兵)を叱る。そのしわ寄せは兵士たち、それも学歴の低い者、職業によって身分が低いとみなされる者たちに及ぶ。

大前田は、どん百姓出身だが武勇では学校出身者には負けていないと豪語する時もあり、学歴や職業などは軍隊に関係ないと考えているようにも見えるが、一方では炭鉱夫を下等な職業と見なしているかのように「モグラ」と嘲笑する。加えて容貌の畸形を殊更取り上げては因縁をつけ暴力を振るう。東堂はそれが許せない。職業によって、あるいは目が小さいだの口が曲がっているだの容貌によって差別をするべきではないと心のうちで考えながら、第三班での日々の訓練生活を送る。虚無主義者なのだが仲間が(もちろん自分も)貶められることに対して見ぬ振りをしてやり過ごすことはしない。班員たちの生きてきた背景や気質などを少しずつ理解しながら、友情のようなものも仄かに生まれ始める。「上官が烏の色は白いと言えば烏の色は白いのじゃ」などと相変わらず理不尽さは留まることのない生活なのだが・・・。

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漫画「神聖喜劇」 ~第一巻~ :: 2019/02/05(Tue)

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原作:大西巨人
漫画:のぞゑのぶひさ
企画脚色:岩田和博
2006年 幻冬舎

大西巨人原作の長編小説「神聖喜劇」を漫画化した超大作だ。六巻完結。
時は1942年(昭和16年)1月から3ヶ月ほど、場所は日本海西の果て・対馬
教育召集された新兵たちの訓練生活の日日を、「私」・東堂太郎(陸軍二等兵)の目を通して描く。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

【第一部 絶海の章】
東堂太郎は第三内務班に配属される。班長・大前田文七陸軍軍曹、内務班附・神山豊陸軍上等兵、村崎宗平陸軍一等兵らが二十名ほどの班員を統率する。




「日中全面戦争の後半期、殊にドイツ、ソ連戦争勃発後、私は軍部と戦争を嫌悪していたにもかかわらず、私個人について・・・・・・・それらを回避したいとは、もはや考えなかった。」 東堂は、それが時代の重圧に対する屈服でしかなかったことを認めながらも、身辺整理をし頭を丸刈りにし「むしろ」召集を待望していた。

私の当代の思想の主要な一断面は、・・・・世界は真剣に生きるに値しない。

時代にゆすぶられ投げ出された白面の孤独な若者は国家および社会の現実とその進行方向とを決して肯定せず、しかも、その変革の可能性をどこにも発見する事が出来なかった・・おそらくそれは、虚無主義(ニヒリズム)の有力な一基盤である。

世界、人生が無意味であり無価値であるからには、戦争戦火戦闘を恐れる理由は私にはなかった。そして戦場は「滑稽で悲惨な」と私が呼んだ私の生に終止符を打つ役を果たすであろう。
この戦争を阻止する何事をも為していない以上、実戦への参加から逃げ隠れてただ他人を見殺しにするのは、結局のところ人間としての偸安とうあん怯懦きょうだと卑屈以外の何物でもあり得ないのではないか。
私は民族人民の破局を予想しつつ、入隊を待った。

―私はこの戦争に死すべきである。
偸安=目先の安楽をむさぼること
怯懦=臆病で意志の弱いこと


軍隊では上等兵に対して「○○であります」と言わねばならないし、「知りません」とは言ってはならず「忘れました」と言わなければならない。数字の読み方にも決まりがあって、四は「よん」、七は「なな」、九は「きゅう」と言うことになっている。

東堂は軍隊の規則や何とか典範やら何やらを一字一句間違いなく覚えていて、必要であればそれを引用して上官をギャフンと言わせる。兵業開始5分前の呼集については入隊して間がなく、教えられていないので「知りません」と答えた。教わっていないものを「忘れました」とは言えないと抗議する。

数についても「砲兵操典に数に関する呼称云々があって、番号の発唱もこれに従って行われねばならず・・・・これを軍隊外の事柄にかりそめに適用すれば『賤ガ岳のナナ本槍』および『ヨン十八手』であります。以上終わり。」と模範回答をして、しかし心の中では「そして班長殿の官姓名は陸軍軍曹大前田文ナナ・・殿であります」とペロッと舌を出すようなことを思っているのである。

そうは言っても軍隊生活の理不尽さは日々存在し、一般社会と同じような職業や出自による差別も持ち込まれる。第三内務班班員たちも大学出、農民、炭鉱夫、漁民、印刻屋、相撲取り、新平民など様々な人間の集まりだ。それを背景に東堂太郎の対馬での生活が第二巻へと続いていく。




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咳が出る :: 2019/01/31(Thu)

1月25日(金)
 友人が頼んであったものを持って来てくれた。寒いからと狭い玄関に入ってもらって10分ほど立ち話。

1月26日(土)
 1時半から4時過ぎまでニットカフェ。その後、図書館に行って18が予約していた本「七つの会議」を借りてくる。日野屋さんにも寄って甘酒と腹黒餅を購入。

1月27日(日)
 1時半から4時までニットカフェ。

1月28日(月)
 先日の友人から、ここだけの話だけれど・・・と言うメール。実は25日の夜に体調がおかしくなって日赤の夜間診療を受けたらば、インフルエンザに感染していることが判明した。医師にはこんな軽い症状のインフルエンザもあるのかと言われた。30日までは自宅軟禁なのよ、うつしてしまっていたらゴメン。あららと思ったけれど特に変調はないので手話サークルに出かけた。

1月29日(火)
 とくに体調に変化なし。感染していたら3日以内に発症するらしいからもう大丈夫だよと18が言う。

1月30日(水)
 天気晴朗なりのテニス日和だ。体調も気分も良好なので午後2時間仲間とテニスを楽しんだ。映画サークル十人十色のまとめ役のI氏は、かの友人の夫。彼からの連絡事項をまとめたメールの最後に「当方、因振縁座罹患につき蟄居中です。」とある。そりゃ一つ屋根の下に居る訳だから無理ないね。そういうテイクもテニスから帰って来たあたりから咳が出るようになった。大丈夫か?

1月31日(木)
 咳がひどくなっている。胸の辺りがいつもと違う変な感じ。5時に起きたけれどウォーキングは止めることにした。用足し、洗顔、ストレッチ、ラジオ体操と八段錦を済ませ、マスク着用。朝の家事を片付けて朝ご飯を食べて8時40分に見川医院に向かった。熱は36度5分。廊下の隅に呼ばれてインフルエンザに罹っていないかどうかの検査をした。長い棒を鼻の奥に突っ込む。痛い。嫌な感触。「動くと危ないですから我慢しててくださいね。」と言われてものけぞってしまう。「赤ちゃんや子どもは泣いちゃうんですよ~。」と言うので「私も泣きそうだったわ。」と言ってみた。

 少し待って初対面の見川先生に呼ばれた。インフルエンザではないですね、とのことでホッとする。すんごく優しい。ゆっくり説明してくれるし、症状と関係のない骨粗鬆症の予防薬についての質問にも嫌がらずに答えてくれた。

 診断は気管支何とかかんとか。風邪とは違うらしい。とにかくインフルエンザが大流行しているので高熱が出たらすぐに来て下さいと言われ、炎症を抑える薬、咳を軽くする薬、痛み止めに胃薬が処方された。こんなに飲むのかいな、と云う気がするけれど、言われた通りちゃんと飲んで様子を見よう。昼食後服薬して横になったら症状がだいぶ軽くなったような気がする。しばらく大人しくしてないとダメだな。






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戦争は罪悪である :: 2019/01/30(Wed)

2月15日から1週間、「明日へ-戦争は罪悪である-」がいつもの映画館、フォーラム那須塩原で上映される。そのお知らせのページを作っていて、2004年に井上ひさし氏らが「九条の会」を立ち上げた時のアピールを久しぶりに読んだ。あの頃、もうすでに戦争へと向かう道に足を踏み入れようとしていた日本の状況に危機感を抱いて立ち上げられた「九条の会」。その後全国各地に「○○九条の会」が出来た。地域だけではなく職場にも大学にも出来た。それだけ危機感を持つ人が多かったということだろう。

毎月「憲法カフェ」を開いたり、スタンディングをしたりしている「那須野が原・九条の会」が、2月に上映される「明日へ-戦争は罪悪である-」の上映協力をする。チラシに書かれている「戦争は罪悪である」という真っ直ぐで全うな主張が目に飛び込む。二度と戦争はしない、戦争は嫌だ、平和な世界をつくりたい・・・と日本国憲法第九条を日本人は守ってきた。けれど、平和を願う国民を騙すかのように「権力」は少しずつ少しずつ法律を変え、広告業界を手下にし報道業界を操り、「敵国」を作り、戦争も止むを得ないという空気を作り出してきた。


「九条の会」アピール (抜粋)
憲法制定から半世紀以上を経たいま、九条を中心に日本国憲法を「改正」しようとする動きが、かつてない規模と強さで台頭しています。その意図は、日本を、アメリカに従って「戦争をする国」に変えるところにあります。そのために、集団的自衛権の容認、自衛隊の海外派兵と武力の行使など、憲法上の拘束を実際上破ってきています。また、非核三原則や武器輸出の禁止などの重要施策を無きものにしようとしています。そして、子どもたちを「戦争する国」を担う者にするために、教育基本法をも変えようとしています。これは、日本国憲法が実現しようとしてきた、武力によらない紛争解決をめざす国の在り方を根本的に転換し、軍事優先の国家へ向かう道を歩むものです。私たちは、この転換を許すことはできません。


このアピールが発表された2004年当時は、それでもまだ戦争への道を許さないと国民が声を上げれば何とかなりそうな空気だったではないか。なのに今、戦前の天皇制を賛美する勢力がその姿を露わにして平和主義を掲げる民主主義社会を襲おうとしている。施政方針演説で「敷島の 大和心のをゝしさは ことある時ぞ あらはれにける」と、朝鮮半島の覇権を奪い合うロシアとの戦争を目の前にして明治天皇が詠んだ歌を、首相が臆せずに引用するまでになってしまった。国民に人権はない、国の為に戦え、天皇の為に死ねと安倍政権は言うのだ。

この状況に危機感を持つ「那須野が原・九条の会」はこう訴えている。

これらの懸念はすでに現実のものとなりました。次は「憲法改定」。「戦争には反対だけど」「戦争なんて起こらないよ」とみなさんおっしゃいます。確かに「日本が独自で戦争に向かう」とは思えませんが、アメリカの命じるままに自衛隊の皆さんが海外での戦闘に巻き込まれる虞(おそれ)が大きくなってきています。「言葉」だけはきれいな政治家に任せていると(「積極的平和主義」なら「武力」はいらない筈ですが)、気が付いたら「後戻りできない」ところに立っていることになりかねません。

主権者は国民です。主権の行使にはデモ、アピール、陳情、訴訟、投票など、色々な手立てがあります。

「那須野が原・九条の会」は毎月、厚崎公民館(第3土曜日)と西那須野公民館(第2水曜日)で憲法カフェを開いています。あなたも参加しませんか?



独立プロダクション製作の映画で、資金も乏しい中でつくられていると思われる。
商業映画と比較するとかなり見劣りはするものの、
のほほんと生きている(生きてきた)日本人を叱咤し、
戦争をしない為に今何をすべきか、
もう一度立ち止まって考えることを促す内容だ。



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ニットカフェと国会パブリックビューイング :: 2019/01/27(Sun)



写真3ヶ月2ヶ月毎に3日間開かれるニットカフェ。残念ながら初日は参加できなかった。18のセーターの続きは横に置いといて、前回お願いしておいたツバ付きの帽子の編み方を教わる。まずは130目作りめをしなくてはならない。数を数えることは難しい。いつも途中でいくつだっけと迷ってしまうのだ。66?67?その度に最初の目からテクテク数える・・・で、またいくつまで編んだっけ92?93?とまた初めから目を数える。だから作り目をするだけでも時間がかかる訳だ。

2時間のニットカフェでやっと4段ズラズラッと編んで5段目で増やし目をして146目にしたところで時間切れ。明日までに20段編んできてねと言われてせっせと編んでいる。昼食前にあと2段編んで昼食後に最終日のニットカフェへ出かける。だからこんなことをしている場合じゃないのだけれど、編みながら視ていた=聞いていた国会パブリックビューイングが上西充子教授の解説付きで面白かったのでご紹介。

国会中継を観ていて「それオカシイよ」とか突っ込むことはあるけれど、専門家の解説つきだと問題点がはっきり浮かび上がってくる。初のライブ中継と言うことで不手際や間違いもあったけれど、政治に興味のない人にも視る価値ありよと勧めたい。1時間20分ほどにまとめられている。

オッと、時間が迫ってきた。
急げ急げ・・・。




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「Workers (ワーカーズ)被災地に起つ」 :: 2019/01/25(Fri)

ワーカーズコープ?
共同労働の協同組合?
聞きなれない名前だ。

「働く人や市民がみんなで出資し、民主的に経営し、責任を分かちあい、人と地域に役立つ仕事をおこす協同組合」なのだそうだが、具体的にイメージできなかった。ヨーロッパが発祥の地で働き方のひとつの形として定着しているらしい。それぞれが労働者であり経営者でもある。それぞれの平等対等な一票で運営される。

映画「ワーカーズ 被災地に起つ」は、東日本大震災ですべてを失った人々が、これからどうやって生きていくかと考え悩み辿り着いた共同労働で地域を再生してゆく取り組みの記録だ。津波にのみ込まれた岩手県大槌町や陸前高田市、宮城県石巻市、登米市などで地域で支えあって食料品店を経営し障害者の就労支援に取り組み、学童保育所やお年寄りのデイケア施設を運営し・・・など経営者として労働者として活動する組合員の姿を追う。

雇われて働いて給料を受け取るのではなく、それぞれが出資した資金で店や施設を作って働く。賃金を得る為には、工夫や知恵が必要だ。ミーティングなどで意見を出し合い組織を活性化させて行かなければならないのだけれど、そう簡単なことではない。

仙台空港で整備士として働いていた男性が経験した東日本大震災での津波の悲劇。空港敷地内の高いビルの屋上にいたが目の下に死体が流れてくる、助けを求める人がいる…でも何もできなかった。悲しくて辛い。生き残った自分は生かされているんだ、だから地域の為に働こうと思ったという。そこで知ったワーカーズコープと云う働き方で地域の人々と地産地消の店を立ち上げたが、みんなが素人で赤字が続く。その原因は誰も経営状態の詳細を掴んでいなかったこと。電気代がいくらかかっているかさえ知らない。利益とは何?収入と支出の関係はどうなっているの?みんなで初歩の初歩の勉強から始めた。やっと店の経営は赤字から脱却し軌道に乗り、今では巡回販売、土曜日限定バイキングランチなどにも挑戦している。


予告編を観ただけではどんなものなのかわからなかったワーカーズコープ。お金を出し合って立ち上げた店や施設で働く人々とそれを利用する地域の住民との繋がり方を見ると、その苦労や問題点、働いて収入を得ることの喜びや楽しさも含めて、ボランティアではなく報酬の発生する事業経営の形が見えてきた。
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ナレーター・山根基世の落ち着いた声と静かな語り口が良かった。



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謝罪と私たちの決意~DAYS JAPAN :: 2019/01/24(Thu)

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「DAYS JAPAN」という写真報道雑誌を定期購読してきた。昨年の秋だったかに、「財政的に経営困難となったので2019年3月号を最後に休刊する」という知らせがあって残念に思っていた。1年ごとに購読更新をしていたので3月以降に残る何ヶ月分かの購読料の払い戻しの方法をどうするかと訊いてきたので、払い戻し不要、残金は寄付すると伝えた。

それから数か月後の12月。長い間、編集長、発行人として関わり、「DAYS JAPAN」の顔ともいえる存在だった広河隆一氏が複数の女性に性的暴力を加えていたという記事が週刊文春に掲載されたと云うニュースを見た。最初は信じられなかった。衝撃だった。世界各地の紛争、貧困、人身売買、麻薬患者、弱い者への暴力・・・現在、日本を含めた世界では何が起きているかを、世界中のフォトジャーナリストの写真とレポートで伝えてきたこの月刊雑誌は、何よりも「人権を守る」ことを主軸にして取材・編集されてきた。

毎月、世界の今を捉えた写真が掲載されていた表紙だが、2月号は真っ白だ。衝撃を受けたのは読者だけではなく「株式会社デイズジャパン」の社員や編集者や執筆者も同じだ。

2月号の冒頭数ページには、謝罪はもちろん、今後の対応などについて書かれている。大きな衝撃を受け右往左往しているデイズジャパンの精神的な混乱がにじみ出ている。「広河隆一氏からのコメント」として掲載されている2018年12月26日付けの短い文章は、「そんなつもりではなかった、当事者たちを傷つけたという認識に欠けていた」などと「お詫びを」し、「デイズジャパンの代表取締役を始め、任されていたいくつかの取締役や代表理事長を解任されたことを報告する」という極めてあっけらかんとした内容だ。

世の中に蔓延している性的暴力、嫌がらせに被害者が声を上げる様になり始めてはいるが、それにしても・・・だ。「またか」「この人も」という重くて嫌な気持ちと怒りに襲われる。

デイズジャパンへの連載で、東電の原発事故裁判の経過や被曝被災者たちの苦悩を追い続けてきた編集委員の一人であるおしどりマコさんのコメントが、多かれ少なかれ性的な何かを世の男から受けてきている女の想いをよく表している。

(前略)私自身小学生の頃から身長が高く、12歳で166㎝あり、子どもの頃に嫌な想いをしたことが多々ありました。先生に嫌なことをされると何も言えません。誰にも相談できず黙って、自分が悪いのだと思うしかありませんでした。芸人になってからもひどい経験はありました。飲んでいる席で身体に触れられ卑猥なことをされるということもありました。しかし、相手が力を持った立場のある人間だと、仕事が無くなると自分たちだけでなく関わっている方にも迷惑をかける、と黙って耐えるしかないこともありました。
(中略)力に差がある状況で、明確な意思表示がないことを合意の上だとする、そのような立場が上の側の主張には強く抗議したいと思います。そして、広河隆一氏が、よい取材を長年続けて来たから酷いことをしてもいいということには全くなりません。(後略)


周りはうすうす気がついていても、自分は関係がないと何も言わずにそれを放置しておくことは、女性でも男性でもハラスメントの助長に手を貸してしまっていることを認識すべきだ。女性スタッフに対する広河氏の性的暴力・嫌がらせが続いてきたのにも周りの曖昧な態度、応対が何らかの作用をしているだろう。

最終号となる3月号では、「これまでのようなフォトストーリーを掲載せず、全ページを『性暴力』事件やパワーハラスメントの真相解明とその報告、 DAYS JAPANとしてのメッセージ、有識者の意見の掲載などにあてることを編集部として決定いたしました。」という。

「現在、広河氏を絶対化させてきた会社の構造・体質についても、役員など関係者への聞き取りなどの調査をしている」とのこと。皮肉な結末になってしまったことがとても残念だけれど、デイズジャパン社として徹底的な調査、分析、自己批判をして、女性蔑視による、力関係を利用した性的嫌がらせ(だけではなく全ての嫌がらせ)が蔓延する社会から脱する為の一石を投じて欲しい。



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