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山口ヒロミ 銅版画展 :: 2019/01/10(Thu)

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那須まちづくり広場のアートギャラリーで今日から始まった山口ヒロミ銅版画展に行った。重い脳性まひの状態で19年間生きた一人娘の天音(あまね)さんを描いた銅版画。展示された作品は天音さんが亡くなった後も描き続けてきた作品の最新のものばかりだ。

初日の今日は、天音さんが生まれる時の経緯や重度の障害を持つ娘との毎日や夫婦の在り方など、時にはハンカチを目に当てながら明るく語るヒロミさんの話が聞けた。アートギャラリーに集まった30名余りの聴き手も目を拭ったりワハハと声を立てて笑ったりの1時間。下野新聞や栃木放送、NHKなどが取材にきていた。

出産時、陣痛が早く来たので陣痛を抑える薬で数日出産を遅らせた。その間におなかの赤ちゃんは羊水を飲み込んでしまって死産の状態で自然分娩。何とか息を吹き返したものの1日2日しか生きられないと宣告を受けた。数日しか生きられないのならとそのまま家に連れて帰り、死ぬまでちゃんと面倒を見てあげようと夫婦で見守っていた。数日の筈が毎日目をキラキラさせて生きようとしている天音さん。羊水が肺に入り酸素が脳に運ばれなかったためにほとんどの脳機能がやられ、原始脳だけが残った状態だった。体の痙攣が始まり発作で息がとまってしまう。毎日毎夜泣き始めると止まらず、抱き続けていた。最初は1日2日と言われ、抗痙攣治療のための入院をした時には1年ももたないだろうと言われたのに、毎日毎日泣き続けながら生きている。教師も止めて娘にかかりっきりになる。自分がどうしたらいいのかわからない。

陣痛を押さえて出産を遅らせることに同意した自分が悪かったんだと自分を責め、哺乳瓶でミルクを与えるだけで1時間2時間とられてしまう生活に疲れて、鬱病になり心中を何度も考えた。夫がじゃぁ死のうと言う。14階のマンションの屋上から飛び降りよう、いやいや汚い死に方は嫌だ、鳴門の渦潮に飛び込むのがいい、お前は泳げるから自分だけ助かってしまうじゃないか・・・どういう死に方が良いかと二人で話し合っているうちに晩ご飯の用意をする時間になって台所に立つ・・・こんな笑い話みたいなことを毎日やっていた。後で考えればあれは夫のカウンセリングみたいなものだったんだ思うのだが、と。

1988年、娘のことを知って欲しい、社会と繋がっていたいという思いから「あまね通信」を発行し30人の知り合いに送り始めた。「暮らしの明るい部分を書く」「助けを求める訳ではない」という二点を守ろうと夫婦で約束して。夫婦で話し合う機会も増え今までお互いのことを何もわかっていなかったことにも気づかされた。二人の足並みがだんだん揃ってきた時期だ。少しずつ外へ出て多くの人と接するようになったけれど、天音さんはヒロミさんにしか抱っこされない。学校で企画してくれたイベントに参加しても嫌がって息を止めてしまう。

ヒロミさん自身が参りそうになっていた時に近くで開かれる銅版画の教室を知り、1週間に3時間だけ天音さんと離れて自分の時間を持つようになった。その間はどんなに天音さんが嫌がって泣いても夫に抱かせてルンルンとした気持ちで通っていた。もうその時には母の目で天音さんを見ずに銅版画家として天音さんを見ていた。くねくねする手足も反り返る背中も美しい・・・それが今に繋がっている訳だ。

2000年、19歳の時に天音さんは多臓器不全で亡くなった。その後も銅版画から離れずにずっと天音さんを描き続けている。

大阪の人だから大阪弁で面白おかしく話すけれど、天音さんが生きていた19年の生活はそう簡単ではなかったことは想像できる。聴きながら目が潤む。逞しい生き方に泣いたり笑ったりだ。15日まではヒロミさんが在廊予定だというので、ゆっくり作品を見ながらヒロミさんの話をもう一度聞こう。


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日本だけではなく、世界各国でも展覧会が開かれている。
今年はルーマニアに行く予定だそうだ。




icon九条守れ

さいたま市の女性の句。
教育委員会は公民館報への掲載を拒否しています。


その他にも「9条」取り扱い拒否が様々な形で広がっています。

「九条俳句」市民応援団ができました。


  1. 雑記
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comment

今はもうそういう陣痛を抑える薬は使われてないのでしょうか。
健常者としてのんべんだらりと生きている私よりも天音さんは多くの人に何かを与えて生きたのだと思います。
  1. 2019/01/11(Fri) 09:44:53 |
  2. URL |
  3. 佐平次 #-
  4. [ 編集 ]

∮佐平次さん
未だ使われているかどうか知らないのですが、危険だから使用を禁止すべしと言う意見もあったようです。
天音さんの19年の命を大切に守ったご両親とその周りで静かな力を寄せた近しい方々の温かい関係がヒロミさんのお話から伝わってきました。天音さんの「生」が周りの人々に与えたものは様々な形で一回りも二回りも大きくなって広がっているということですね。こんなに遠い所へも届けられたことに感謝しています。
  1. 2019/01/11(Fri) 17:24:18 |
  2. URL |
  3. テイク25 #NNZ72WTo
  4. [ 編集 ]

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